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日経エコロジー ’14年10月号  

中小企業の環境経営(1)

小さい会社の大きな改革
収益力向上に直結させる

経営資源が限られる中小企業でも、環境経営は実現できる。
身の丈に合った独自の手法で経営を進化させた”小さな巨人”たちを紹介する。

外しやすさで商品力高める

 社員の環境意識を高めるためにユニークな取り組みをしている企業もある。防犯・衝突防止用ミラーを製造するコミーだ。社員とパート合わせて約30人の会社ながら、国内トップシェアを握る。看板商品である航空機の手荷物入れに設置する忘れ物防止ミラーは、累計20万枚が世界の空を飛ぶ。海外企業との取引が多いコミーは、小さい会社ながら国際規格であるISO14001の認証を取得して信用につなげている。

  コミーでは、毎週火曜日の昼食後に、社内にいる従業員が一人残らず会議室に集合する。暗幕が閉めきられ、スクリーンにスライドが映し出される。10分間の「環境プレゼンテーション」が始まるのだ。
スクリーンには化学物質で汚染された川や砂漠化が進む乾燥地帯などの写真が次々と映し出される。この日の担当者が写真の内容を解説し、他の社員からは思い思いの感想や質問が飛び出す。社員とパートが3人1組でチームを作り、仕事の合間を活用し、3か月かけて10分間のプレゼンテーション資料を用意する。

小宮山栄社長は、「お仕着せで環境活動をさせても根付かない。環境問題とは何なのか自分で調べて、考えて、伝えることで問題意識が身に付き、視野も広がる」と考えている。
トヨタ生産方式を確立した大野耐一氏は、ものの本質を理解するには「なぜを5回繰り返せ」と語った。小宮山社長はその姿勢を、コミーの企業文化として浸透させてきた。そして利用者のニーズを徹底的に深掘りすることで、様々な用途のミラーを開発してきた。本質を突き詰める姿勢は環境対策でも役に立った。

昨年、ISOの審査員に忘れ物防止ミラーの分別廃棄の方法を尋ねられ、担当の社員は頭を抱えた。強力な両面テープでミラーと壁とを接着していたため、分別が困難だった。「考えてみれば利用者がミラーをはがして別の場所に再び使用したいときに、ミラー本体も壁側も傷付けずにはがす方法がないことに気付いた」と開発室の横田鉄生氏は話す。
脱落しないことを追求するあまり、外し方まで気が回らなかった。耐久性を高め長く使える製品を開発してきたはずなのに、一度きりしか使えない製品になっていた。両面テープのメーカーに尋ねても有効な方法が見つからなかったため、何カ月も試行錯誤を重ねて、ミラーを外すための専用工具を開発した。
素材や楔の傾斜角を何通りも試し、実際に25年間ミラーを設置している顧客を尋ねて外す実験もした。工具は顧客の要望があれば貸し出す。いかにもシンプルなたったこれだけの道具が、コミー製品のリユースを可能にした。とことん考え、試してみる。コストではなく知恵を注ぎ込む。その姿勢が小さな会社の「環境革命」を一歩前進させた。