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埼玉新聞 ’13年11月6日号

競争しない経営術で躍進

「気くばりミラー」で世界貢献

コミー(川口市)の「気くばりミラー」は誰もが一度は目にしたことがあるだろう。死角に目と心を行き届かせる画期的な鏡。コンビニの万引き防止や接客支援、ATMの後方確認、病院や公共施設内通路の衝突防止、旅客機の忘れ物・爆弾チェックなど、活躍シーンは枚挙にいとまがない。「コミーは物語をつくる会社」と語る小宮山栄社長(73)。どんなストーリーが展開されてきたのか。(三宅芳樹)

■航空機の評価対象に

店舗に設置する凸面鏡は、用途に応じて形状や大きさがさまざま。防犯ミラーの国内シェアは8割を誇る。平面で視野が広い「FFミラー(ファンタスティック・フラットミラー)」は、ATMの後方確認や車出口の安全確認などに広く利用されている。

特筆すべきは、航空機内上部の手荷物入れに設置する「FFミラーAIR」。客室乗務員が忘れ物や危険物を確認する際の手間と時間の削減に、大きく貢献している。米ボーイング社にサンプルを送り、厳格なテストを経て1997年に初採用。以降は各社の旅客機で標準装備され、「航空会社で5つ星の評価を得るにはコミーの鏡が必要」とまで言われるようになった。

■草食的経営を
小宮山社長はコミーを“草食系企業”と位置付ける。「食うか食われるかの世界で身を削るより、競争のないマーケットを開拓し、新しいモノづくりや顧客満足の向上に力を注いだ方がいい」。
商品は大手が参入しにくい業務用に限定。常に現場で役に立っているかを確認し、破損した場合は無料で取り替える。商品の多様さ、受注の翌営業日に発送する納期の短さ、充実したアフターサービスは、他社の追随を許さない。
小宮山社長の起業は挫折から生まれた。信州大学工学部を卒業後、大手ベアリング(軸受)メーカーに就職するも、劣等感から3年半で退職。転職を数回重ねた末、67年に東京・駒込で看板の文字書き屋として独立し、翌年に事務所を構えて社名を「コミー工芸」(現コミー)と名付けた。
回転看板の製造販売を手掛る中、遊び心で独自の回転装置に鏡を付けた「回転ミラックス」を製作。展示会に出したところ、近くのスーパーから30個もの注文を受けた。「なぜ商品が売れたのか、何に使われているのか。疑問に思い、現場へ行ってみた。万引き防止に非常に役立っていると聞いて驚いた」。これを機に鏡メーカーへと転進する。

■出合いの喜び大切に
コミーのロゴマークは「?」と「!」で形成されている。
「社員には『なぜ?』と考える習慣をつけてほしい。そこから『すごい!』という気づきが生まれ、他人や社会への感謝、志が生まれる」と小宮山社長は持論を語る。
印象的な出来事を小冊子にし、多くの人が追体験できるようにしているのも、世界企業に発展した要因の一つだろう。「航空業界参入物語」、「新社屋建設物語」、「ブランド物語」、「給湯室長物語」─。物語は20を超え、40周年を迎えた今年の6月には一冊の本にまとめた。
「社員全員が“出合いの喜び”を大切にし、多くの方々に支えられながら“創る喜び”“信頼の喜び”を感じている。今後も死角を生かす気くばりミラーを極めていきたい」。コミーの物語は続く。