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工場管理 04年2月号

INTERVIEW──

現場の問題を明確にすることで、バラツキと戦いながら現場解決力を育てる

顧客の声を形にすることにこだわり続け、世界へはばたく会社に成長したコミー。1979年から気くばりミラーの製造・販売を開始して、現在100種を取り扱い、防犯・安全用途の特殊ミラーでは国内約7割のシェアを持つ。
競争力と付加価値を持つ商品を次々と生み出し、5Sに始まる改善活動にも熱心で、中小製造業ならではのSCMなどにも取り組んでいる。
“小さな強い組織”の社員たちがどう仕事を進めているのか、競争力の源泉を同代表取締役小宮山栄氏に聞いた。

現場でないとわからないことを「聞く」のが大切

―改善活動に熱心と伺いました。

小宮山 私たちの現場には日々いろいろな問題があります。小さく見えるトラブルでも、つい見過ごしてしまったり、明確化していないために、何の問題を話しているのかが不明瞭になることが非常に多いと感じています。改善活動を進めてきた結果、今は「問題の発見から結果出しまで」が社員の仕事だと思うようになりました。

―明確にできない問題とは。

小宮山 今、1つの不良が出ているとします。顧客から不良といわれなくても、当社で適当に判断し、その「判断」が不良品をつくっているのです。これは顧客の使用状態を考えれば良品なのに、当社が不良だと決め付けてしまうパターンです。こういう問題はどこの会社でもあるはずです

―具体例を挙げてください。

小宮山 製品は顧客の使用状況において、現場で役立ち、問題が出なければよいはずです。ところが100人の顧客が100人とも気づかないレベルの表面のキズがあるだけで不良と見なしてしまう。同じ製品でも使う側の事情によって、求められる機能は異なります。ですから、検査基準は当社がきちんと決めればいいのです。
航空機に採用されている製品などの受入検査基準は非常に厳しいものです。しかしこの場合は、航空機の座席の上の手荷物入れにつけるミラーとして不具合がなければよく、そこへ取り付けて客室乗務員が荷物の取り忘れを見るのに問題がないなら、キズは本質的な不良ではありません。顧客にとっては機能に支障のない表面キズより、5年、10年経っても使える状態であることの方が大事です。

―製品の使用される現場へ足を運ぶと伺いました。

小宮山 受入検査の厳しさよりメーカーとして顧客に実際に使う人を満足させている事実をきちんと提案できればよいのです。そのために製品が使用されている状態をよく知り、その現場でどう使われ、どういうことで困っているのかをきちんと把握します。それをやらない検査担当は不良を見つけて製品をどんどん廃棄し、しかも本人は仕事をしたと思っています。

―その理由は。

小宮山 顧客からの要求でもクレームでもなく、顧客の状況をよく知らないために「顧客にとってよい商品とは?」という問題が明確化されていないからです。
当社では何より「3つの現場」を大事にしています。1つは製品の使用現場、2つめは製造現場、3つめは製品が販売される購入現場です。使用現場で製品が役立っているか、後で問題は起きていないか、製造現場ではいかにバラツキのない製品をつくるか、購入現場ではなぜ当社の製品を買ってくれたのか?買わなかったのか?を聞くことができます。これは現場でないとわからないことです。

―今挑戦しているテーマは。

小宮山 工場は日々バラツキに対して挑戦し続けています。また、不良の原因もバラツキに起因します。たとえば人によるバラツキは2つに分けて考えることができます。1つめの「他人バラツキ」は、いくら手順通りでも作業者によって、指や腕の動かし方やスピードが異なることです。2つめの「本人バラツキ」は同じ作業者でも状況や気分によってレベルに差が出ることです。

100個つくるのにAさんなら100個良品、Bさんなら5個不良または手直し品になるなら、これは明らかに作業者のバラツキ、つまり「他人バラツキ」の問題です。まず素直にバラツキ要因をはっきりさせないといけません。そして一番大きなバラツキ要因をどう潰すか、これが質の管理の原点です。同じ素材、同じ道具、同じ環境で同じ作業方法でつくれば同じモノができるはずです。単に推定ではなく、極端な不良品をつくってみて「こうするとこういう不良品が出ますよ」と明確化しておくことが必要です。

―受注バラツキへの対応は。

小宮山 当社では「受注発注方式」と「赤ライン方式」の2通りを採用しています。「受注発注産方式」は顧客から100個の受注を受けたら部品を100個だけ発注するもので「赤ライン方式」は部品を使ってたとえば残りが100個になったら50個単位で発注するものです。札が見えたらすぐFAXをかけられるように、裏を発注書にしています。さらに現場で「部品が足りなくなりそうだ!」というときに備えて「警告ライン札」もつくっています。これはいわゆる後引き方式で、顧客からの受注をラインに反映させて、その発注単位は製品の種類や売れ方によって変えています。従来からの「赤ライン方式」に併用して、3年前から「受注発注方式」を取り入れた結果、「赤ライン方式」の運用も非常に楽になりました。

―作業習熟の点での問題は。

小宮山 新人の作業者の場合は特に、接着工程など手先の細かい動きが必要な作業のバラツキ幅は大きくなりがちです。こうしたつくり方のバラツキは不良の原因になりやすいため、今後は教育システムをどうするかが問題です。
新人が入社してきた場合、まず仕事を教えなければなりません。教える作業者が新人に一日中つきっきりで教えるのはムダではないか?と考えた結果、当社では1年前から教える人と教わる人共通の「教学時間」とその後新人の「復習時間」を設けることにしました。たとえば教育担当の作業者が新人に5時間仕事を教える場合「教学時間」は5時間です。新人の手先の器用さなどにより異なりますが、10時間から30時間の「復習時間」をとります。また教育のための道具づくりも必要です。

―現場が考える力が大事だと

小宮山 社員には日々「毎日問題を発見して、発見したら大騒ぎしてくれ」といっています。問題の在り処がわかれば、ベテランの誰かが解決できます。それよりも問題を潜らせず、まず顕在化してほしいのです。解決するのはその当人でなくでもよいのですが、問題を発見できるのは現場だけです。

―これからめざす姿は。

小宮山 まず問題の明確化ができたら、次に目の前にある問題の解決法を習慣にします。問題は必ず解決できるんです。それは自力でなく、他人の力による解決でも「終わりました」といえるようにする。それが仕事の楽しみでもあり、仕事そのもの、お金をもらうことの対価でもあります。当社にとっては当たり前ですが、「なぜ?」と本質を追求し、問題を明らかにしてぶつかっていくのは、単に記憶すればなんとかなると教えられてきた人にとってはエネルギーのいることかもしれませんね。

(山下 徳里子)