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日刊工業新聞 06年11月24日号

モノづくり屋自慢2

「なぜ」のない奴はダメ

顧客の立場で考える

日刊工業新聞日刊工業新聞 06年11月24日号
日刊工業新聞 06年11月24日号

人生でモノづくりの楽しさを本当に味わったのは本田宗一郎氏だと思う。「デザイン『こと』始め―ホンダに学ぶ―」(岩倉信弥著)によれば「20年近く前、私たちが仕事をするデザインルームに遊びに来られた本田さんが、『日本人はなぜ富士山が好きなんだろうね』とおっしゃった。ずっと昔から、本田さんの問いには即答するというのが体に染みついているから、とっさに『美しいからじゃないでしょうか』と、あまり上手でない答えをした。するとさらに『どこがどういう風に美しいんだ』と聞かれて答えに窮した」とあった。その後、著者は「なぜ」「なぜ」と考え続け、出した結論が非常に面白かった。

今、著者は多摩美術大学教授として「?!」のマークを作り、「これのない奴はこの教室へ入るな」とやっている。

コミーも「なぜ」と言う奴だけを募集したことがある。「なぜのない奴はダメだ」とある会合で話したら、「うちの会社でなぜなどという言葉を使ったら怒られる」と言う人がいて、私の方がビックリした。

「こんなことを考えるより、おまえは1票でも増やせ」「うまく答弁しろ」「売り上げや利益を増やせ」の世界の方が一般的なのかも知れない。

モノづくり屋には少なくとも2種類の大切なお客さんがいる。それは「お金をくれるお客さん」と「モノを使ってくれるお客さん」である。コミーでは「両方大切だが、使ってくれるお客さんの方が大切」と宣言している。そうだとお金をくれるお客さんも安心してくれる。

ホンダは「創る人、売る人、使う人」がそれぞれ喜びを得ることを目的にしているという。つまり三方に喜びをつくるのが目的である。しかし商業の場合よほどの哲学がないと、こちらがもうかったら相手が損する関係になってしまうことが多い。

昔、パチンコ屋の経営者に聞いたが、玉を出せば客は喜ぶが、こちらは損をする。絞めればもうかるが客が入らなくなるという。そのためには、だましたり駆け引きをする能力がなければ務まらないだろう。やはりモノづくり屋の方が喜びが多いと思う。