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日経トップリーダー ’13年8月号

ビジネスドメインへのこだわり─成長企業の市場戦略─

世界が認めた、現場に役立つものづくり。

 

コンビニ、銀行のATM、駐車場、エレベーターなど、あらゆる場所でユニークな鏡が活躍している。防犯、事故防止、忘れ物防止など安全・安心の確保や、接客における気くばりなどに欠かせないこの業務用ミラーの市場を創り出し、世界に名を知られるのが、社員数17人という小さなメーカー、コミーである。他社の追随を許さない製品を生み出す理念とは何か。

 

●出発点は、現場で知った本当のニーズ
大学の工学部を卒業後、大手部品メーカーに勤務していた小宮山さんは、大企業の競争体質が肌に合わず退職、いくつかの職に就いた後、看板業に居所を見出す。一九六八年には東京・駒込に、看板製作、店舗シャッターの文字書きや塗装などを手がけるコミー工芸を設立した。

ここで小宮山さんは鏡に出会う。機械の知識を活かし、たまたまもらった凸面鏡を利用して回転ミラーを製作してみたのである。これを展示会に出展すると、あるバラエティショップが三十個も注文してくれた。「一体どう使っているのだろうと思い、その店に行ってみたら、驚いたことに万引き防止のためだったのです」。

隠れた需要を知った小宮山さんは以降、次々に革新的ミラーを世に送り出していく。一九八二年には業務用ミラーの専門メーカーとなった。製品は東京都輸出奨励商品、グッドデザイン賞などに選ばれ、高い評価を得る。中でも、平面でありながら凸面鏡のように広い視野を映し出す「FFミラー」はヒット商品となった。一九九七年にはアメリカのボーイング社が「FFミラー」を採用、今では手荷物棚用「FFミラー」は最新鋭機787やエアバスA380の標準品になっている。

製品開発の判断基準となっているのは、「現場のユーザーの役に立つかどうか」だ。「航空機の場合、乗客にとっては忘れ物防止に、客室乗務員にとってはセキュリティチェックに役立っていたのです。製品開発では特に現場の実務者の要望に応えることが重要ですが、それに気づくことがなかなか難しいのです」。コミーでは、常に社員に現場を実地検証させ、ユーザーレポートを作成させるなど、使われ方の探求に力を注いでいる。「役に立たないものは作りません。少人数でも『これがなければ困る』という人がいる製品だけを作りたいと考えています」。

●co.jpドメインで『コミーらしさ』を追求
「役に立つ」という考え方の背景には、日本ならではの他者に配慮する文化がある。コミーが自社の製品を「防犯ミラー」でなく、「気くばりミラー」と呼んでいるのも、犯罪防止だけでなく、接客や挨拶を助け、人間関係を円滑にする役割を担うからだ。「箸、畳などからもわかるように、日本文化には、質素、省エネ、汎用性、高機能などの特色があり、当社製品もそうした文化から生まれたことを誇りに思います」。
そうした日本の誇りやものづくりを訴求をするため、ウェブサイトのドメインはco.jpを用いている。世界で使われている製品だけに、co.jpで日本企業の技術力や安心感を伝えられるメリットも大きいという。「海外の商談で名刺交換した際、すぐに日本のメーカーだとわかってもらえます」。

ウェブサイトでもコミーらしさを追求している。最近、「FFミラー」の使い方を説明する動画を掲載したが、専門家のアドバイスを参考にしながら、企画、台本、撮影、出演など、すべて社員の手で行われた。また、「事業とは物語を創ること」という小宮山さんの考え方がわかる「コミー物語」も特徴的なコンテンツだ。これは小宮山さんが経営哲学や会社の歩みを記した読みもので、コミーへの理解促進に大きな役割を果たしている。