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朝日新聞 08年3月28日号

会社のチカラ くらしを変える埼玉

世界の航空機が採用

昨年10月25日、エアバス社の最新鋭旅客機「A380」がシンガポール‐シドニー間に初就航した。最多で853席を持つ世界最大の旅客機。この製造プロジェクトには日本企業21社が参画する。富士重工業や住友金属工業など大企業に交じり、唯一の中小企業として、県内の製造業者も名を連ねている。

「コミー」(川口市並木1丁目)が提供しているのは、「FFミラーAIR」。約15センチ×10センチ、42グラムの小型鏡だ。1機あたり約200枚が、手荷物入れの内部に取り付けられている。
ミラーは平面でありながら、広範囲な視野を持つ凸面鏡の性質を持つ。乗客が降りる際の忘れ物防止のほか、爆弾など危険物の点検も効率的に行える。
エアバス社が製造受注している189機(昨年10月現在)すべてに、このミラーが標準装備される。エアバス・ジャパン(東京都)は「機内の快適性に重点を置いた機体にマッチした。特に女性に使いやすい」と採用した理由を話す。「とりわけ、コミーのミラーは世界的な認知度が高い」(広報部)という。

「まじめにモノづくりをしてきただけ。メード・イン・ジャパンを信用してくれた」。コミーの小宮山栄社長(68)は力を込める。
たたき上げの職人だ。塗装業などを転々とした後、67年、東京・駒込で小さな看板会社を始めた。
今の事業のきっかけが生まれたのは78年。ある日、店先に置かれていた鏡をヒントに、回転看板に取り付けた「回転する鏡」を展示会に出品したところ、予想外の売れ行きだった。購入理由を聞いたところ「店の万引き防止になる」。
以来、防犯ミラーの開発・製造へと社の主軸を移し、88年に店舗や公共施設の天井などに付ける凸面鏡と、それを平面にした「FFミラー」の販売を始めた。

今では、FFミラーは、後ろからののぞき見防止用に全国の現金自動出入機(ATM)に採用されているほか、96年から参入した航空機業界では、エアバスだけでなくボーイング社製の旅客機にも採用。欧米での特許を持ち、25以上の世界の航空会社で使用されている。「メード・イン・川口」が世界の空を駆けめぐっているのだ。

コミーの成長の秘密は「商品が使う人の役に立っているかどうか」を常に意識すること。同社では、販売先に必ず商品の利用状況を聞くことにしている。「回転鏡」がヒットし、今の事業が生まれた体験が土台になっている。これまでに約6万台以上を出荷した航空機向けのミラーには、苦情は一件もないという。

商品の総称を「気くばりミラー」とし、近年は、商品上に「後方確認用ミラー」など、使い方がわかるよう明記する取り組みも進めている。
「モノづくりの会社として、役に立たないモノは売らない方がいい」と小宮山社長。そのこだわりの姿勢は、食品や古紙など相次いで発覚するメーカーの偽装問題にも厳しい目を向ける。

「偽装に走った企業は、競争にとらわれ、目が客から金に行ってしまった。売り上げよりも自分が手がけたモノを見てもらう、これを原点にしなければならない」(中野龍三)