Home > メディア掲載記事 > 設備と管理 2001年9月号

設備と管理 2001年9月号

世界の空にはばたく物語を作る

設備と管理
コンビニエンスストアや工場、公共施設などで利用される防犯(安全)ミラーのトップシェアを誇るコミー株式会社。ユニークなアイディアが盛り込まれた製品群を作り出す同社の創業時の思い出や、ヒット商品の開発と世の中に認められるまでのいきさつ、そして航空機の手荷物収納棚や客室確認用ミラーに採用されるまでの経過、また今後の新製品の開発にかける思いなどを、製品が陳列されている東京ショウルームでお聞きした。

編集部 看板業で始まったということですが、創業当時のことをお話ください。
小宮山 設備と管理 記事

大学卒業後に、ボールベアリングを作っている会社に勤めたんですが、うまくいかず退社し、その後、いろいろな仕事に携わりました。ペンキ屋、自動車修理、塗装屋、百科事典セールスなどです。看板の文字書きは自分で勉強しました。シャッターに文字を書いている人の話を聞いて、自分も近くの本屋に頼んで書かせてもらったらお金をくれたことが始まりで、「シャッター文字書業」で独立したようなものです。

その後、場所を貸してくれる人がいたので、看板業を始めました。30年前のことです。そして、看板文字を書きたい人がいて、その人は現在、専務として活躍しています。

近くの看板書きとか銀行のシャッター書きとかしていて、たまたま知り合いが海外に行くというので、羽田へ見送りに行ったんです。そこで偶然、昔一緒に働いた技術に詳しい友人に会って、何をしているのかと聞かれ、看板業を始めたと言いました。

帰りが同じ方向だったので会社へ寄ってくれたんです。

そのときにちょうど困っていたことがありまして、というのは、電気屋さんに作ってもらった回転看板があったんですが、回転を強制的に止めるとモーターがだめになってしまう。そこで友人にどうしたらいいんだと聞いたんです。そしたら彼は長考のあげく、外側を止めても内側でモーターが回っているようにしたらいいと提案してくれました。お金もかからない。それで特許を出し、回転看板を売り出したんです。今でもキーコーヒーやドトールさん等の回転装置はコミーのものが使われています。

当時は、何か回してみたいという気持ちがありました。ミラーとの関係は、たまたまいらなくなった凸面鏡を使ってほしいと置いていった人がいたんです。回転看板に付けてみたらとも言っていました。初めはいらないと断ったんですが、結局、置いていってしまったんです。

一方、国際ディスプレイという動くディスプレイを作っている会社がありました。偶然その会社に行ったときに、モーターをもらったんです。その時は引き出しの中にしまっていたんですが、ある日、凸面鏡2枚とモーターの貰い物同士を組み合わせてみたんです。中に電池とモーターを入れて回転するようにしました。初めての人が見ると不思議そうな顔をするんです。風もないのに。これは商品になるかもしれないとその時思いました。

マーケットについてはほとんど知りませんでした。このときも高校の友人が助言をしてくれました。いろいろな友人との出会いが、商品(回転ミラックス)に結実したわけです。

世の中に受け入れられたのは、アクリルミラーの特長である、軽くて割れにくい、取り付けやすい、反射率がよい、といったことがあったと思います。お店で使ってもらえるように事故がない、デザイン的に防犯ミラーっぽくないということも考慮しました。

編集部 差し支えなければ失敗談をご紹介ください。
小宮山 ミラーボールセットを作ったことがあります。お金と時間をかけて作ったんですが、マーケット的にも技術的にも向かなかったんです。結局は撤退しました。一般ユーザー向けの商品を手がけるのは、誰に売るのかはっきりしていないし、売れるとなれば他の業者の参入もあります。外国から安い商品が入ってくるケースもあります。私共の規模の会社では難しかったです。その点、業務用商品の場合は購入先や目的がはっきりしています。使った人に喜んでもらい業界で信用を得れば、だんだん蓄積されます。

撤退時の後始末も大変でした。関係した所に迷惑がかからないように気配りも意外と大変でした。

編集部 FFミラーの開発のきっかけは?
小宮山 平らだけれど大きく見えるレンズがありますね。鏡で同じようなものがあってもいいんじゃないかという発想から思考錯誤してみたんです。FFミラーの特長は、平らだけれども広く見えることです。出っ張らないということが一番のメリットです。エレベーターは、以前高いところにミラーが付いていたんです。FFミラーは目の高さにつけておけば、次に乗り込んでくる人が見えるんです。現在デパートなどいろいろなところで使われています。

某ビルで起きたことなんですが、最初に付けた時にミラーが壊されて、強度のあるポリカーボネート製に変えたんです。やっと付け直し、ホッとしたところ今度は剥がされるということがありました。密室ですといろんな問題があります。それらをクリアーして、現在のものになっています。

その他、住宅の自動車の出口等でも安全確認用に使われています。

編集部 ボーイング社の旅客機にFFミラーが採用されたときのいきさつをお話ください。
小宮山 航空業界に詳しい友人がいて、FFミラーが飛行機で何か役にたつかと聞いたことがあったんです。見本を送って関係者に打診していただいたが、もう付いているとかの返事でした。商品開発している立場からは、現場で見てみたいという気持ちから、一度旅客機の中を見せてほしいと強く要求したんです。しばらくして、見学の機会がやってきたので、現場をよく知っている人に立ち会ってもらえるよう希望しました。それでベテランスチュワーデスや客室係の主任さんとともに機内を案内していただき、ビン(手荷物収納棚)の利用で困っていることなども教えていただきました。

スチュワーデスはFFミラーはとても有用だと言ってくれました。忘れ物のチェックの際、ミス無く作業ができるということでした。実際に忘れ物が長期間置きっぱなし、ということもあったようです。しかし、技術責任者から、「飛行機の世界は基準が厳しく大変だが頑張ってください」とはげまされました。それで調査を行ないました。火災に対しては特に厳しいです。トレサビリティといってどの商品がどこで誰が何時作ったか全部分かるようになっているんです。全部ナンバーが打ってあって経歴が分かるようにしなければいけません。ISOの資格取得も必要です。

ボーイング社からFFミラーの打診があったとき、私は、ビン向けだけを考えていました。これだとまとまった数が必要になります。しかし、ボーイング側はキャビン向けの使用を考えていたんです。割れると危ないガラスは使いたくないのでプラスチックのミラーを探していたんです。しかし数は少ししかでません。

編集部 製品が思わぬ使われ方をしていたといったことがあるようですが。
小宮山 FFミラーはビンの上に1枚付けるものと思っていました。しかし、SAS(スカンジナビア航空)では、ビン内の左右に1枚ずつ使用して、乗員が機内を歩きながら点検できるような使いかたをしていました。危険物のチェックもしやすくなったわけです。私たちが思っていなかった方面の効果が評価されていたわけです。キャセイ航空や中華航空もこのような使い方をしています。また、FFミラーを壁に付けて客室の確認にも利用されています。
編集部 これからどんなことを目指されますか。
小宮山 「航空業界参入物語」という冊子を作りましたが、仕事が一段落すれば物語ができるわけです。逆に、物語を作りながら仕事を進めていってもおもしろいと思っています。社員は1人で2~3のプロジェクトに携わっていますが、仕事が完成したら物語を作ろう、ということでやっています。プロジェクトには社外の人との出会いが重要と考えています。必要な分野のプロを探してお願いしています。それで私たちのレベルが上がっていくんだと思います。開発と一口に言いましても、技術開発、マーケティング、生産システムなどがあります。マーケティングの中には、例えばホームページがあり、デザインや編集が必要になってきます。それぞれのプロにお願いすることで品質のよいものが提供できているんだと思います。生産にしてもいろいろなプロがいます。機械、道具作りのプロ、1個流しのプロ、ISOのプロです。この方たちから知恵をいただきながら物語ができていきます。

店舗業界で防犯ミラーと言えば「コミー」というブランドはできたと思います。今後は、航空機のミラーでも世界的なブランドを目指していきたいと思います。それには、技術もマーケティングも生産システムも、少しでも高いものを目指していかなければならないと考えています。お互い、教えられたり、教えたりしながら。