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週刊朝日 10年3月5日号

TBS「夢の扉 ~NEXT DOOR~」
未来の原石たち TBS系「夢の扉 ~NEXT DOOR~」コラボ企画

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航空機の手荷物棚の中やエレベーターの入り口部分などで、小さくて平面なのに広い範囲を映し出すミラー。 そんなユニークな商品を開発し、従業員30人ながらニッチな市場で圧倒的なシェアを誇る。 様々なジャンルで夢の実現を目指す「未来の原石たち」の第4回は、コミーの小宮山栄社長を紹介します。

広い範囲を映す平面鏡 世界の航空界を席巻

コミー株式会社(埼玉県川口市)は、「不思議な鏡」を作り、不況の中で業績を伸ばしている。従業員30人を率いる小宮山栄社長(70)は、言う。
「コミーのミラーは、顔を映すガラス製の鏡ではなく、気くばり専用で超軽量のミラーです」
死角を映す、特殊ミラーを作っているのだ。
書店やコンビニでは防犯用、空港では入国・出国審査ブースでのすり抜けの防止策、介護施設などでは廊下の曲がり角で車いす同士の衝突を防ぐ安全対策にも役立っている。
カーブミラーなど広い範囲を映す鏡はふつう、鏡面の鏡が使われて重いが、コミーのミラーは軽くてデザインも豊富だ。
たとえば、平面なのに視野が広く映る「ファンタスティック・フラットミラー(FFミラー)」。軽くて簡単に張り付けることができるので、駐車場の出口などでも使用されている。
銀行の現金自動出入機(ATM)では、「暗証番号をのぞかれないか不安」だが、設置されたこのミラーで近くに人がいないかを確認すれば大丈夫。エレベーターでよくある「閉まる瞬間に人が乗り込んで挟まる」というトラブルも、ドア付近に張り付けられたミラーを見るだけで避けられるのだ。
「凸面をいかに平らにするかが課題でした。デザインをすっきりすることで、設置できる場所も増えました」
と小宮山さん。施行錯誤から生まれたFFミラーは、ひとつのきっかけで世界に広まった。
1996年、米国ボーイング社から一通のファックスが届いた。そこには「コミーの製品をわが社で使えるか確認したい」の文字。航空機への搭載には、有毒ガスや可燃物に対する厳しいチェックがある。小宮山さんは新にFFミラーAIRを開発。翌年、ボーイング社から検査合格の通知が届いた。
機内でFFミラーAIRが活躍するのは、手荷物棚の内側。平面なので荷物を入れるのにじゃまにならず、通路からふたを開けて見るだけで忘れ物や不審物の確認が簡単にできるのだ。
番組ではミラーの「あり」「なし」で、客室乗務員の確認作業にどのくらいの時間差が生じるかを試した。ミラーがない場合は、座席下の足掛けにいちいち登って棚の中をのぞきこまなければならない。結果は、ミラー「あり」が約18秒、「なし」が約42秒。半分以下の時短!
「非常に効率よく仕事ができ、役に立ちます」
と客室乗務員もその効果を実感していた。
FFミラーAIRは欧米の特許も取得し、世界30社以上の航空会社で延べ10万枚以上が使われている。航空機の荷物棚用はシェア100%に近いという。
小さな企業が、なぜ世界に誇れる商品を作れたのだろう?
「寝ても覚めても気くばりミラーのことを考えていたことと、色々な人がその知恵や力を貸してくれたおかげです」
コミーの主力製品は50種類。サイズ違いや特注品を含めれば、300種類近くになる。
「多品種、少量生産、短納期の生産システムで、いかに現場で役立つものを一台でも早く納められるかを、朝から晩まで考えています」

アイデア生かしニッチ市場を開拓

小宮山さんには、もうひとつの大事なポリシーがある。
「競争相手がいなければ、お客様と社会のことだけ考えればいい。他社と競い合う商品の場合は相手がどう出るかを考え、最終的にお客様を忘れるかもしれない。だから競争はしません」
競わない分野を探して、アイデアと技術力をより輝かせた。 でも、若い頃から予定通りの道を歩いてきたわけではない。
大学卒業後、メーカーに就職したが、「性に合わず」3年で退社。独学で勉強して、27歳で看板会社を始めた。そして37歳のとき、たまたま店に置いてあった鏡を、回転看板と組み合わせてみたら、ウケたのだという。
「展示会に出してみたら、まとめ買いする店主が現れた。インテリアとして作っていたのですが、買った人の店に行くと、万引き防止用に役立てていた」
そんな使われ方?という意外な需要との出会いが、看板業からの転身につながり、ミラー製造での成功へと導いたのだ。
さて、最近、小宮山さんは新たな商品開発に挑んだ。目指したのは「絶対割れない鏡」。鏡の常識を打ち破るため、自らハンマーを持ち、何種類もの素材をたたく。そして「弾丸の実射による耐久力テスト施設」のある神奈川県横須賀市の防衛大学校の協力を得て、割れない素材を追求した。
ここでは、大学校教授が銃を素材に向けて構えた。まずアクリル、塩化ビニル、アクリルゴムでは銃弾を受けた途端に破片が飛び散った。
しかし、ポリカーボネートという、機動隊の盾などに使われる素材は、弾丸が貫通したものの、飛散することはなかった。強度はガラスの約300倍、アクリルの約30倍にもなる。
新素材をポリカーボネートに決め、工場に戻ってテストと試作を繰り返した。ようやく完成した新しいミラーに、小宮山さんは「ワーレン」と命名した。
その特性を知った食品工場から、すぐに発注がきた。鏡が割れて食品に破片が混ざったら命とり。でも、そんな危険は「100%」起きることはない。
小宮山さんは穏やかに、でもまなざしに闘志を秘めて言う。 「これからも気くばりミラーで『死角のない社会』を創り続けたい」

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