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Forbes(日本版) 03年10月号

ボーイング社にミラーを納入する日本の超零細企業

従業員15万人以上の航空機メーカーに、正社員15名の企業が部品を供給している。すぐには信じ難い話を確かめるために、埼玉県川口市にあるコミーという会社を訪ねた。

同社の小宮山栄社長は、信州大学工学部を卒業後、一部上場のベアリング会社に勤めたが、サラリーマン生活になじめず、数年で辞めてしまった。数種類の職業を転々とした後、看板業にたどり着く。そこで回転式の看板を製造して、そこそこの実績を上げた。この時期、回転式の軽量かつ堅牢なミラーを開発した。このミラーは、盗難防止ミラーとして、本屋、コンビニ、ビデオショップなどに採用された。現在でも、この分野ではシェア7~8割を誇っている。
1996年10月、突然コミーに米ボーイング社から引き合いがあった。客室視認用ミラーとして使用を検討するので、サンプル3枚を至急送れというものであった。まだアメリカへの特許申請を出していない時期でもあり、小宮山社長は二の足を踏んだ。そうこうしているうちに、ボ社の仕入れ担当者が来日した。

こうして、ボ社および米航空宇宙局の耐熱性、強度試験などにパスしたミラーは、ボ社の新型機から採用が決まった。客室視認用のミラーは、離発着時の乗務員が着席のまま、客席に異常がないのかを確認するミラーである。乗務員が前向きのまま担当エリアの安全を視認できる。機内のキッチンのギャレーにも採用された。

同社のミラーは、ガラスの200倍の強度を持つポリカーボネート繊維を使用、表面の特殊加工により、平面のまま広角視野を確保できる。現在ではボーイング機国内線(JALほか各社)をはじめ、ほとんどの国際線に導入され、用途も機内視認用からBIN(手荷物入れ)の安全確保、荷物取り忘れ防止にまで広がった。

埼玉の超零細企業コミーが、世界の航空機の安全に一役買っているのである。

(河野 實)