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Forbes(日本版) 07年12月号

技術で世界を支える小さな大企業

エアバスのA380に標準装備されるFFミラー

エアバス最新鋭の超大型旅客機「A380」、この開発には日本企業も参画しているが、並み居る大企業の中に、年商わずか5億円ほどの小さな企業の名前がある。埼玉県川口市でプラスチックやアクリルの鏡を作っているコミーである。
A380の手荷物棚の中に、同社のFFミラー(ファンタスティック・フラット・ミラー)が標準装備品として収まる。手のひらサイズの平らな鏡だが、手荷物棚の上辺に取り付けると、凸面鏡のように中がすべて見える。乗客や客室乗務員がこの鏡をちらっと見れば、荷物の置き忘れがないかがたちどころにわかるのだ。
「小さな会社ですが、相手が非常に信頼してくれたということです」
コミーを創業した小宮山栄社長の声は晴れ晴れとしている。ボーイング社でも、最新機には標準装備する方向に動いているという。
コミーは、看板の文字書きの会社としてスタートした。やがて回転看板の注文が来る。回転看板を作っていると、ある人が「これを看板に付けてみたら」と凸面鏡を置いていく。おもしろいものができたので展示会で陳列したところ、30個も買っていく人がいた。77年のことだ。
「何に使うんだろうと見に行ったところ、万引き防止に使われていてびっくりしました」
そこからコミーは、特殊鏡のメーカーにかじを切る。万引き防止のアクリル製の凸面鏡は現在、「気くばりミラー」と呼ばれている。
「お客様が入店したら、気づいて明るくお声掛けするための鏡です。結果として万引き防止になるのです」
FFミラーの開発は86年。「レンズにも平らなのがあるのだから、平らな鏡で広角に映せるのではないか」という発想。エレベーターの挟み込み防止やATMの後方確認用に採用されていく。旅客機への可能性を見いだしたのは96年。手荷物棚に設置すれば乗客サービスにつながる。そう考えていたときボーイング社から声がかかる。シートベルト着用中、客室乗務員が後方確認できる鏡を、ガラスからプラスチックに変更したがっていた。
「その用途だと1機で3つ、4つしか必要ありませんから、採用されたと言われても、正直うれしくありませんでした(笑)」
手荷物棚用なら1機で100~150個必要だ。本格採用は99年、JALのジャンボ機から始まるが、最初は爆発物が棚に残っていないかを客室乗務員が確認する用途だったようだ。乗客サービスとして認識されるようになったのは最近のこと。旅客機用のFFミラーは累計6万個出荷された。1個として付け替えの要求がないのが自慢だ。
「FFミラーはコミーだけの製品ですが、世界の旅客機の3%に付いているにすぎません。乗客サービスと爆発物チェックができ、しかもメンテナンスフリーである点を強調しながらセールスしていきたいと考えています」
小宮山社長は、残る97%の可能性に少なからず自身をのぞかせる。(大下明文)