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夜明けの喫茶店(1999.04)

胃を切ってからいつの間にか早寝早起きの習慣が身に付いてしまった。

未明のNHKラジオを聞いたあと散歩。星や月を眺めたり、嫌でも飛び込んでくるコンビニのバカ明るさ、 自販機のゴーゴー音を聞きながらいつもの小さな喫茶店に行く。そこではゲームに夢中になっている人、勤めを終えたホスト?ホステス。ホテル代わりに寝てしまいマスターに起こされている人。たまに、もてあまされた酔っぱらい。それから無銭飲食でレジで謝っていた女の子もいた。

朝5時ごろの客はほとんど昨日の続き派だ。私のように今日の始まり派はいない。私はここでゆっくり新聞などを読み、今日やりたいことを考える。 ここへは週3~4日来ているので、もう300回位は来ているだろう。

マスターやウエートレスは愛想よく他の客と話をしている。しかし、私は話のきっかけをつくるのが苦手なので「コーヒー」とだけしか言わない。 しかし、300回も行けば、しかも客が私一人だけの時も多いので、向こうは私がどんな奴なのか関心もあるはずだ。

私の外見は朝起きたばかりなので身なりはひどいはずである。服は散歩用なのでズボンのチャックが何回か開けっ放しになっていたこともあったし、顔も洗っていないし、ヒゲもそっていない。 無精ヒゲ、無精服、それに無愛想だ。まあ金500円は払うし、うるさくはないので客は客。

しかし、ウエートレスやマスターに笑顔も見せず、ひと言も声をかけないのは良くないと思うようになった。それは、マレーシアやアメリカへ行った時、現地で成功している経営者に 昼夜にわたり3日~4日間いろんな店を紹介してもらった経験からである。彼らはウエートレスやウエーターに実に親しく笑顔で話しかけ、いろいろなことを聞き出し、先方も楽しそうにしゃべっているのである。

「なるほど!こういうところで現地に溶け込み、教えてもらいながら仕事にも活かしているんだな。俺も日本に帰って真似しよう」と思った。

そして、今年は自分を思い切って変えようと決心した。まず、いつもの喫茶店のウエートレスに笑顔でコーヒーを頼もう。そして教科書通りにしてみよう。教科書には「人とコミュニケーションを得るには共通の話題が必要。それにはまず時候のあいさつが無難」とあったと思う。

しかし「今日は寒いですね」と私は時候のあいさつをされた時、「でも昨日に比べてあったかいですね」と答えてしまう困った癖がある。まぁいいや、チャレンジだ。 これだけ心の準備をして喫茶店へ行った。いつものウエートレスがオーダーを聞きに水を持ってきた。私はさっそく笑顔をつくって「コーヒー」と言った。なんとそのウエートレスは、私の顔を全然見ていなかったのである。 過去の300回のオーダー時の「無愛想」によって、私の顔を見ない方が良いという習慣が付いてしまったとしか思えない。

「笑顔」「時候のあいさつ」そして「世間話」というステップのはずであったが…。これからどう声をかけようか悩み続けている。