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T字路のボランティア(1998.07)

「大人の生き方」とは「人に役立つ喜びを得ること」だと思う。
役立ってお金を貰うのが「ビジネス」、
お金を貰わないのが「ボランティア」。

今、大人になれずに役立たない苦しみを抱えながら、お金で疲れきった人たちが増えているのでは?…。
ずっと天気が続くと思い、傘を貸したが、雨が降ってきたのであわてて弱い順から傘を取り上げる銀行。
嘘とわかっていても、言い続けなければならない経済企画庁。当たり前のように、先輩の真似をして収賄で罰せられた大蔵官僚の切なさ。

特に金融機関はまじめな人の「自殺者」もかなりあったし、「殺人者」までも出てしまった。
せめてボランティアをして「人の役に立つ喜び」を得ればいいのにと思う。
とはいえ、私の場合、この仲間を探すほどの意欲はないし、あまり人前ではやりたくなかった。

前置きが長くなったが、ある日の散歩時に、白い杖を持った人が、T字路の正面に向かって歩いていた。
このままで行くとぶつかってしまう。
誰も見ていない。

よしっ!小さなボランティアをしようと声を掛けた。
「右ですか、左ですか?」
「真っ直ぐです」
「真っ直ぐ行くとぶつかってしまいますよ」
「ぶつかっていいんです」
「?…」

なんとぶつかる先には「指圧・はり・マッサージ」の看板が掛かっていた。
ささやかなボランティアが失敗に終わった。

その後、彼を見掛けるたびに苦笑し、「あの時はどうも…」と言ってみたくなる。
しかし彼からは絶対に私に声を掛けられない。
その分彼の耳や脳は研ぎ澄まされているであろうが……。