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2人に1人はガンになる時代の必須本 「抗癌剤知らずに亡くなる年間30万人」という本を推奨します(2005.08)

平岩正樹著祥伝社刊
740円

抗ガン剤専門治療の平岩正樹医師による「週刊現代」の連載が単行本になった。

平岩氏は治療を行うかたわら、ホームページでガンの無料相談を行い、何より患者と医師の対話が大切と説いている方である。本書には具体例が多く、患者の立場に立って平易に書かれているので、治療方針を立てるときに類書よりもはるかに役に立つと思う。

本書は「日本人の二人に一人がガンにかかり、患者6人のうち5人が死ぬが、ほとんどの患者は、最近の進歩した抗ガン剤の治療を受けられない」という驚くべき現実を述べる。我が国ではこの専門医が決定的に不足して、全国でも数十人にすぎないからである。

こうなる原因は「その多くに強い副作用があり、適量に個人差が大きく、投与には細心の注意が必要な抗ガン剤の技術料が我が国では無料」ということだと本書は説く。窓口で払う高額な薬代は病院を素通りして製薬会社に行くのだ。抗ガン剤の専門医を育てたくても原資がなければ不可能なのだ。その結果、

  • 効果が大きいのに強い副作用などで投与が難しい薬は、なかなか処方されない。
  • 効果が少なくて投与に修練も要らない副作用の少ない薬が、どんどん処方される。
  • 抗ガン剤の副作用による苦痛を軽減またはゼロにする技術はあるが、それを知る医師は多くならない。

となり、適切な抗ガン剤の治療を受けずに死ぬ人が大勢いる状況になった、という。

本書は、この技術料を認めている米国では抗ガン剤専門の医師は四千人もおり、専門の病院まで現れて、日本では到底できない治療、例えば他国の有力な薬剤も用意し、昼間よりも薬の効果が高い夜間に投与する、などを行って成績を上げていると記す。

先日、NHKのテレビ番組で、ガン患者の皆さんが厚生省の高官に“外国で成果を上げている薬を日本の健康保険でも使わせてくれ”と訴えていた。“日本におけるデータが少ない”とか“申請がないから認可のしようがない”という理由で健保採用されないものがいくつもあるという。高級官僚が天下る我が国の製薬会社の利益を企っているのか、単なる事なかれ怠慢なのか分からぬが、医師会が大騒ぎしないのは不思議だ。政治家も医療は票にならないせいか問題にしていないようだ。

しかし、市民の一人一人が意識を高めれば政治も行政も必ず変わる。本書はそのための貴重な一冊である(笠井記)