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「掃除と分類」物語:<連載No.10>

床屋で「長めですか?短めですか?」と聞かれたら・・・

会社で「床屋へ行ってきたら・・・」といわれたのでやむを得ず行くことにした。

いつもは初老の夫婦のところだが、ちょっと遠かったので以前3回ほど行ったことのある近くの床屋ですませることにした。

ここの理髪師たちは若いあんちゃんから、じいさん、ばあさんまで5、6人おり、彼ら同士は自由な会話を楽しみながら仕事をしている。その分、客との会話は少ない。

今回はボサボサ頭で茶髪の若いあんちゃんに当たった。

「どうしますか?」 と聞かれたので
「前と同じに・・・」と答えたが、これでは通じないようだ。

私は自分の好みはうまく表現できない。私の場合床屋の目的は、好みにしてもらうというより、他人から不潔だと思われたくないためだ。

あんちゃんは私に答えをせまっている。

「三分刈りとか五分刈りとか・・・」というと、
「そんなら坊主ですよ。坊主でもいいんですか?」
とのこと。

しかし坊主ではこちらはハゲの問題もあるので
「いや坊主では・・・」
というと、やっと先方から
「スポーツ刈りですか?」と聞かれ、うなずくことができた。
スポーツ刈り、という言葉がとっさに出なかったのである。

あんちゃんはさらに私に追いうちをかけて質問した。

画像:床屋にて 「長めですか?短めですか?」

その質問に私は恐怖を感じた。このまま「もういい」といって席を立ちたくなった。しかし、ここは近所で道で会うこともあるし、前を通ることもあるため、我慢することにした。

「標準です」と答えようとしたが、恐かったので、もっと愛想よく答えることにした。

「長めと短めのちょうど中間です」とやっと答えた。その時まわりの理髪師たちの首がいっせいに動いた。やっと本人も納得して仕事を始めてくれた。しかし、私は彼の髭剃り時の鋭くて長いプロ用刃物を使ったスピーディーな動きに、かなり緊張していたことは確かである。

私の反省点として、知らない床屋に行くときは「普通のスポーツ刈り」という言葉を用意してから行くべきと思った。

しかし究極のサービス業なら「前と同じ」といわれただけで一ヶ月前の髪型を想定できるだろうし、写真を何種類か準備して客に選ばせればよいと思う。

「長めですか?短めですか?」などと聞かずに、

「長さは普通ですか?」と聞いてくれれば良かったのにと思った。

考えてみると三つに分けても我々のほとんどはまん中で生きている。

「中庸、普通、中」がほとんどである。

「上、中、下」「高、中、低」「大、中、小」「強、中、弱」「明、中、暗」「過去、現在、未来」「見せ筋、売れ筋、目玉筋」等々。そして我々客の多くは普通を求めながら安心した毎日を送っていると思う。

昔バブルの時代、若い女性たちは「高収入、高学歴、高身長」と三高を求めたが、あれから彼女らの心はどうなっているのだろう。今になって普通の男でも良かったと思っていないだろうか。平凡な毎日に掃除をきちんとし、「凡事徹底」を続けた鍵山秀三郎さんのような凄い人になるのではないか。

尚、あんちゃんの仕事の仕上がり具合はどうだったか?ごく親しい女性に「どこの床屋へ行ったの?ハゲが目立つよ」といわれた。

なるほどスポーツ刈りというより坊主だった。

不思議と後悔はなかった。なぜか?これは一ヶ月もすれば問題が解決するからである。

増えるリスクと減るリスク

そういえばリスクマネージメントでこんな分類法を聞いた。

「時間が経つほど増えるリスクと、減るリスクを分けなさい」と。

車のように動くものは、初めは問題なくても5年、10年後に大きな問題になっては大変である。欠陥車など早く回収すべきである。
それに対し、時間が経つほどリスクが少なくなるのは政治家の悪事である。田中角栄にしても鈴木宗男にしても、ばれた当初はミソクソに書かれるが、時間が経ち、選挙というみそぎをすませれば次第にみんなが忘れてくれるようになる。我々の5年後、10年後になって「増えるリスク」と「減るリスク」を考えて見ると面白いのではないか。

但し、暗く考えないでネ。

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