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新社屋建築物語 <連載No.4>

4. 設計への取り組みと施工業者の選定

●新社屋には何が必要か。 その意識を共有するためのたたき台の提示

2005年9月に顧問の篠﨑さんは、新社屋建設に対する従業員の意識の共有を図るための課題を示した。その要点は次のようなものであった。
①工場・第二倉庫(第二)、営業部門(マーケ)の一体化による効率向上
②将来の増産に対応した面積の確保
③作業効率の低下を解消するため、広さを確保
④研究開発の強化
⑤精度不良やコスト高の問題を解消するため、設備を増強し外注の一部を内製化
⑥部品の入荷、在庫棚での保管、部品の先入れ・先出しやピッキング品の置き場、 組み立て作業、包装、出荷品置き場という一連の流れを円滑化して効率をアップ
⑦IT機器活用の拡大
⑧整理・整頓を心がけクリーンな職場を実現するとともに、将来のISO14001の取得に向けての取り組みを強化

これらを「素案」として、従業員たちはどのような新社屋にしたらよいか話し合いを重ねた。 間もなく経営陣も加わり、「素案」を基本として新社屋設計のおおよその方向性がかたち作られた。 重量のある機器を設置するために地下室を作り、エレベータを設けることも検討したが、必要性はそれほどないので、荷物専用の昇降機を設置することにした。 また将来を考えると、地上3階建てとした。工場となる1階と2階にどのような機器や備品を入れるかも議論となったが、重量のある機器は1階に設置することを基本とした。 問題なのは騒音が大きいコンプレッサーだが、静かに稼動する新しい機器を購入することにした。またカット機器も新たに購入するようにした。

●建築設計事務所に設計・監理を依頼 セカンドオピニオンを期待

施工業者である工務店に設計も含めてすべてを任せることも考えたが、これでは違った角度からの意見が出にくくなってしまう。 そのため設計は、セカンドオピニオンを期待して、施工業者とは別に建築設計事務所にお願いすることにした。 この設計事務所の建築士には「現場優先」と「効率向上」という機能を重視したできるだけ安価な建物を作りたいと伝えた。 ただし、1つだけは10年後でも「これは良かった」と思える象徴的な何かが欲しいことも合わせてお願いした。

●新社屋は「箱」で良い

新社屋に対して「建物に自己主張は必要ない、箱でよい」という考え方を持っていた。 色などは、なるべく近隣建物と同じようにし、機能に徹する。「箱」なら最も機能的に利用でき、必要に応じて新たな変更を加えることも難しくない。 このような方針で、設計段階の打ち合わせで必要性が乏しいものは、徹底的に削ぎ落としていった。

●「セカンドオピニオン作戦」 施工業者の選定のため、建築主を訪ね歩く

施工業者を選定にかなり時間をかけた。昔からの知り合い、銀行の紹介、地元の工務店、あるいは建築士の紹介など様々な選択肢があった。 この過程で思い当たったのが“User’s Satisfaction”だ。つまり建築主(ユーザー)の満足度を確認しながら、施工業者を選ぼうと考えたのである。 そこで、ここ数年の間に新築や改築をした建築主さん8社あまりを訪ね、施工業者に対する意見を伺った。 「地元業者は対応が早い」「大手業者は建築期間が短いので助かった」「マニュアルがなく、工事に関する統一されたシステムがない」「同じ工務店でも担当者によってバラつきがある」など、肯定・否定両面から率直な意見を聞くことができ、大変参考になった。中でも、コスモ総合会計事務所の玉川さんに紹介していただいた、伸好舎と不二エレクトロニクスの社長である竹澤さんに新工場を見せていただいたとき、竹澤さんは設計・施工をした大和ハウス工業さんを好評価していた。その話より、高いブランド力のある会社が、施工業者決定の大きな理由となった。 具体的には、納期が遅れたという話を聞かない。考えてみれば同社は全国規模で事業を展開し、阪神大震災を経験して自社の建築施工技術に生かしてきたという強みもある。椅子や机などの備品の取り揃えや役所への申請も含め、建築に関するすべてがシステム化されていることも、建築主にとっては手間が省けて助かる。さらにコスト的にも大きな魅力があった。

●建築設計事務所との摩擦

施工業者を大和ハウス工業さんに決めようとしたとき、設計・監理を依頼していた建築設計事務所との間の意見の食い違いが表面化した。同社は大手施工業者として、設計・施工・監理を一貫して行うが、当社はこのときすでに建築設計事務所と正式に設計・監理契約を結んでおり、建築士による詳細な設計もかなり進んでいた。 当初は大手施工業者に工事を依頼するとは考えておらず、建築設計事務所と契約を結んだわけだが、前述のような経緯で大和ハウス工業さんを選ぶことになった。一時、設計はそのまま建築設計事務所に、施工は大和ハウス工業さんに依頼して進めることも考えた。しかし、それでは同社の設計・施工・監理という一貫したシステムのメリットが生かせない。何とか両者の連携を図ることはできないかと苦慮したが、解決は困難だったため結局、建築設計事務所に謝罪した。2006年5月17日、大和ハウス工業さんと設計・施工・監理契約を結んだ。 建築設計事務所の建築士はもともと意匠設計を得意としており、当社の目指す方向とは違っていたのではないかと思う。幾度となく打ち合わせを重ねたが、最終的に意見をすり合わせることができなかった。 建築士と当社の意思の疎通が不十分で、お互いを理解していなかったのではと反省している。後でわかったことだが「銀行員とはこういうもの」や「職人とはこういうもの」は学んだつもりだったが、「設計事務所とはこういうもの」という考えがなかったことも原因であったと思う。

●工事開始前に近所へ挨拶

6月9日 基礎工事

7月11日 躯体工事
8月10日 内装工事
8月29日 アスファルト工事

工事期間中、注意を払ったのは近隣住民への対応である。 「川口市宅地開発等に関する協議基準要綱」には高さが10mを超える建物(当社新社屋は10m以下)を除けば、近隣住民に建築計画を説明することに関する条文はなく、その義務も明記されていない。しかし何の対策も講じなくてかまわないのだろうか。もしクレームがあった場合は、どのように対応すればよいのだろうか。コミーにとっては初めての新築案件であり、それがわからなかった。 そこで現場近くで古くから仕事をしている小原歯車工業さんを訪ねたとき、この疑問についても意見を伺った。同社は、数回にわたり増改築をしているが、工事中に近隣からクレームを受けたこともあったという。その場合には社長自ら工事内容を説明して理解を求める努力をされたとのこと。近隣住民対策の重要性を改めて認識させられた。 このアドバイスを受け、建築工事が始まる前に近隣住民、近くの地主さん、町内会長さんなどを訪問し「工事中はできるかぎり迷惑をかけないように注意します。業務開始後もよろしくお願いします」と挨拶にまわった。訪問した皆さんは、快く対応していただき大変ありがたかった。このことで工事中に近隣クレームがなく、スムーズに運んだことにつながったと思う。

●大和ハウス工業さんの評価

2006年5月23日から大和ハウス工業さんによる工事が始まった。新社屋の完成・引き渡しは同年9月4日で、本当に「あっ」という間であった。 同社にお願いしたときには、すでに基本設計はできており、詳細設計もほぼ決まっていたので、それを担当者に説明した。 その仕様に基づき、大和ハウス工業さんが得意とする工法や設備の導入を検討し、細部を詰めていった。 工事中は、コミーの担当者が2週間に1回程度、現場に出向いて、工程確認と詳細仕様承認を行った。自分の権限で判断できる事柄はその場で決定し、内容によっては会社に持ち帰り社長の指示を受けた。コミーのニーズを一つひとつ伝え、お互いに検討を重ねた。 コミーは大和ハウス工業さんに対し、次のように評価した。 ・ 現場責任者がしっかりと安全や工程を管理していた。 ・ 担当者が代わったき、同じ内容の説明をしなければならなかったという面倒があった。 ・ 法令順守の姿勢や顧客満足への努力には感心させられた。 大和ハウス工業さんにお願いしたことは、総合的に見て間違っていなかったと思っている。