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畳の部屋の物語 竹カンムリのデザイン 第2話

竹カンムリのデザイン 第2話

● その一 床 ゆか ● 畳について 和室は畳が命である。 備後の表が一般的(備後は広島県の一部)でへり付である。 古い躾にへりを踏んではいけないというのがあった。今はソレ何?である。 今回、コミーの畳部屋の畳はへりのない四角い畳である。琉球と一般に言われているものである。 どこの畳店にお願いしようかと考えた。絵を描くことが主な仕事となった私には専属畳店は直接的にはなかった。 仲間のインテリアコーディネーターの畳店と知人の民家再生プロ集団グループの畳店に的を絞った。琉球表を持っている、それも国産。 予算も合わせていただける。ということで埼玉県北本市の神戸畳店を訪ねた。 奥様と若い息子さんたち計四名の工場、看板に一級技能士畳店と表示はあえてしないという職人の心意気あふれた社長さんだ。 住宅地の中でさっぱりとした構えで仕事をされている。整頓も見事である。神戸さんに依頼することにした。再生プロ集団の顔が重なって見えた。 ここで今回和室で使用する琉球畳を紹介したい。神戸氏から教えていただいたものを引用する。 国語辞典で琉球表を引くと琉球地方のとうしんぐさで織った畳表とある。 表は七島イグサとも呼ばれ、江戸初期薩南を経て大分県に伝来、七島イグサで織られた畳表を琉球表と呼ぶようになったという。 その特徴は断面が三角状になっていること。泥染めをせずに乾燥した後織られる。主に大分県国東半島で作られていてその織り機は手織り機である。 草を一本一本手でさし入れて作り1日3枚くらいの織りあがりらしい。 現在は技術指導で中国産が多く出回っている。通し糸は綿でなく麻糸である。 国東の77歳のおばあちゃんが編んだ畳表が今回使われました。神戸氏は日本の琉球表としてこの表が最後の手仕事になるかもしれないと寂しげに語った。

● 竹について バンブーフローリング 踏込み部の床は竹のフローリング。 乳白色の仕上がりです。材料は国産でなく中国、淅江省臨安市の工場で製造されたものです。 日本では居間・洋間のフローリングは銘木化粧合板が中心ですが、この材料は天然無垢の集成材です。1枚の幅は9cmで竹の厚みは12mmです。 奈良県桜井市の(株)竹田木材工業の製品、ハウスメーカーの有名な企業もお得意様になっている。5年前、筆者は仙台市内の現場で同材を使用しました。 お客様はアウトドア派の歯医者さん。赤いディフェンダーで西へ東へ南へと走り回っております。アウトドア派もほれこむバンブーフローリングでした。 人の体が触れる第一歩の踏込み上がり部に天然のさわやかさ、美しさを考えてみました。これは籐ムシロの味に通じるものがあると思っております。 ● その二 壁 かべ ビニールクロスが和室を占領しています。分譲建売の壁はビニールクロスが主流です。 印刷技術が塗り壁と寸分わからない仕上がりに進歩したのです。 北側の部屋、風通しがよいとはいえません。 天然ものの土では湿気を考えなくてはなりません。 手仕事の塗り壁、古めかしくない味、防カビということで高価ですが、アイカ工業(株)のジョリパットを考えてみました。 アイカ工業(株)ショールーム室長とは長いお付き合い。建築家、安藤忠雄氏とヨーロッパ建築視察にも行った建築通。材料が良いのはわかった。 腕が良い集団を指定したいと申し込む。暫くして東村山市の(有)ソーテック社が候補に挙がった。 どういう人たち、どういう会社かを知るため、直接ソーテック社を訪ねた。 若い松田社長、もと左官経験ありという担当の小山氏、ソーテック社で依頼していたサンプルとアイカ工業で作成していただいたサンプルを見比べながらお互いのよいところをセレクトして決定してみることにした。 新しい社屋、整理整頓の作業場、倉庫を確認して帰宅した。再度アイカ工業ショールームを訪ねる。 カラーコーディネーションは、チーフコーディネーターの平山久丹江さんが本気になってコーディネーションして下さいました。 いいセンスの持ち主であり美人でもある。 田中氏には次は挾土秀平さん(左官のカリスマ。今、日本で一番人気の左官集団のリーダー)を指定するからというと「やりましょう」といってニッコリ。 コミーの壁はケイソウ土風仕上粒子入り模様です。壁は三上親方自らがコテを持って仕上げをしてくれました。 ● その三 建具・造作 (有)武蔵創美のこと 以前、武蔵創美の藤倉社長には都内のホンダベルノの新社屋・ショールームの製作・施工を8物件ほどお願いたことがあります。デザインは筆者が担当しました。 3年前には民家再生のプロ集団の設計物件で川崎の温浴施設を担当、2人で日本の温泉カリスマ後藤哲也氏を訪ねました。 後藤氏は2日かけて私達に現地で施設の基本を指導して下さいました。 古材を使用した家具づくりに、後日、後藤氏は、武蔵創美の作った家具を高く評価して下さいました。 またモダンな建物の設計で内外に高く評価されている谷口吉生研究所、リーダーの小川広次氏設計の中原洋邸で武蔵創美は、造作、キッチン、洗面、建具全てを製作、建築家とのコラボレーションとして高い評価を受けました。 雑誌『住宅建築』の表紙を飾る快挙でした。 氏は川口市領家の(有)山一商店とパートナーを組んで銘木と塗装と木工のコラボレーションを行っております。 塗装は藤倉専務、東京で一、二のプロ。世界の銘木「北三」も一目置く山一商店の社長、専務のセレクトする銘木は楽しみです。 この度、武蔵創美社は造作として建具枠、建具、床貼工事等を担当いたしました。建具としてレオを市松模様にして使用いたします。 山一商店よりレオとゼブラについての解説をいただきましたので、ご紹介いたします。

レオ(建具表に使用) ・別名 ダオ ニューギニアウォールナット ・学名 Dracontomelon dao ・科 漆科 ・産地 パプアニューギニア ゼブラ(床の間、押入れ、収納に使用) ・学名 Zebrawood ・科 マメ科 ・産地 アフリカ

市松デザインのコミーの建具、木目の木の縮み(ギラ)が光りにどう輝くか楽しみの一つです。

● その四 石 ● 黒い石、玄昌石 料亭、和風料理店や鮨屋の床は一般に黒いものが多い。 タイルであったり、ミカゲであったり玄昌石であったり様々である。上り口部床は玄昌石、これは粘板岩でスレート屋根、硯と同種の石です。 ・生産地 ポルトガル ・加工 中国 いつも黒さを保つには2ヶ月に1度は石用ワックスが必要です。 厚さ8mm、天然の石です。 貴族達の空間の石ではなく、生活者に身近な石の一つです。 ● その五 鋳物 「キューポラのある街」という映画があった。川口市の古い街がロケ地、吉永小百合が主演だったと記憶している。 キューポラとは小さな熔鋼炉の意味を指すようである。 小宮山社長と和室の材料等の打合せで、私は是非とも川口の誇れるものを使ってみたいと申し出てみた。 快く「それはおもしろい」ということで、即、コミー本社のそばの佐々木鋳工所へ伺った。アポなしである。 佐々木鋳工所の佐々木社長は、私の申し出に「平板づくりは可能だが、出来上がりはなんとも言えない」と答えた。 マニュアル通りに正しく仕上げる通常品に対して、ワイルドで素朴な表情を求めた板がほしいということに、「大丈夫かなー」と笑顔が曇った。 常務の上田さん、「やってみましょう」ということで7月29日、午後5時、湯入れということになった。 長さ1600mm、奥行440mm、厚さ30mmのくぼんだ砂型が作られていた。この中に溶けた鉄を入れるのである。 小宮山社長と開発部の岩田さんが立ち会った。 クレーン操縦者と炉操縦者の2人の息のあった作業で白赤色の鉄の湯が注がれた。1500度に近いという。 明後日、私は工場の隅で厚さ30mmの砂付き鋳物板の磨き仕上げにかかった。2時間ほどでやっと素地あたりが見えてきた。 空気に触れて茶褐色に変色していく板を見ながら生きていると思った。 床の間の板がそれである。重さは160kgはあるという。 

プロフィール 大渕 澄夫 1947年生まれ ランドスケープ ドローイング 建築インテリアデザイナー (社)日本インテリアデザイナー協会会員 アトリエ・O 代表 「大淵澄夫とその仲間たちの手仕事」代表 【主な作品】 東京大学大学院教授 内藤廣研究室のインテリアデザイン 小田原鈴廣「千世倭楼」のインテリアデザイン アトリエ・Oのホームページ