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航空業界参入物語<連載No.3>

ボーイング社の責任者がオンボロ社屋のコミーへ

ボーイング社に対するコミーの不信感が芽生えてきた。
そんな中、担当責任者が来日、我々に会いたいという。

●ボーイング社への不信感の芽生え「サンプルは当分の間出すな!!」
米ボーイング社からFAXが届いて半月後、航空機の部品を製造している国内一部上場企業A社から電話が入った。A社のアメリカ支社が、当社がボーイング社に提出したFFミラーのサンプルを見せられ、これについて知りたいと言われたというのだ。
この一本の電話で、ボーイング社に対する不信感が沸き起こってきた。「コミーなどという得体の知れないメーカーよりも、既に信頼関係のあるA社に作らせた方が安心だろうと考えたのだろうか……」

ボーイング社の真意はどこにあるのか。電話をかけてきたA社を訪ねた。
我々はそこで、会社の姿勢、オリジナル製品であるFFミラーは既に10年の販売実績*を持っていること、量産できる体制があること、そしてなによりもFFミラーに今までどれだけ力を注いできたかを力説した。後になって考えてみれば、FFミラーという市場自体、大手企業が参入するほど大きなものではなく、杞憂に過ぎなかったのであるが。しかし当時は特許も取っておらず、真似されても法的対抗手段を持っていなかった。この時の話からでは、米ボーイング社の真意はつかめなかった。しかし、これを教訓に、今後サンプルを出す時は、特許や仕様承認、量産体制やコストなど、すべての条件が整ってからにしなくてはならないと考えた。

●不信感とビジネスチャンスへの期待との葛藤
同社への不信感が解消されないままの96年10月、商社を通じて米ボーイング社から、テスト用のサンプル3枚を請求された。一歩前進とは思うものの、どうしても他のメーカーに公開されるかもしれないとの不安が拭いきれず、悩んだ末に「運輸省の仕様承認*が得られるまで待ってほしい」と返答した。
そうすると折り返し、「なんとか送ってもらえないだろうか」とまた連絡が入った。なおもためらっていると、11月に米ボーイング社の責任者が来日する予定があり、その時にコミーとのミーティングに一日設けたいとの連絡も入ってきた。
商社の担当者にも、「いい機会だから思いきり話をしてみたらどうか」とすすめられ、不信感があるものの、逆にこれは売り込みのチャンスかもしれないと思うようになっていった。
コミーのFFミラーは既に10年の実績がある。創業以来、大きなトラブルもなく、日本のさまざまなユーザーから信頼を得て、安定供給できる基盤も持っている。このチャンスを活かそうとの考えにようやく至ったのである。

●「星条旗と日の丸で歓迎」と「誠心誠意」しかない国旗
そうした前向きな気持ちにはなれたものの、ひとつ問題があった。会談場所だ。 マンションの一室である巣鴨のショールームか、川口にある本社工場か。商社の担当者に工場を下見してもらうとあまりに狭く小さいので、「ここだけですか?」と明らかにガッカリした様子であった。敷地面積50坪、ミーティングルームは4畳半より広い程度。だがウソをついても仕方がない。コミーは大企業ではないが、大企業に作れない製品と信頼を持っているのは事実。誠心誠意、この川口で対応するしかない。
川口でのミーティングに決めた後も、当日の会談をどう進めたらよいのかといろいろ考えた。先方は従業員15万人を抱える巨大企業の部品仕入れ責任者である。どう接したらいいものだろうか?そんな時、かつて読んだ本田宗一郎氏(本田技研工業創業者)の本に、外国に行った時に日本の国旗を見て感動した話が載っていたことを思い出した。そうだ、とりあえず日米の国旗だけは飾ろう。早速、デパートで日の丸と星条旗を買い求め、机にディスプレイして歓迎の意をあらわすことにした。

●3時間にわたる熱いミーティング
11月15日午後3時、米ボーイング社の部品仕入れ責任者が来社した。
彼は我々の表情を見ながら話す。我々も彼を見る。彼の印象は、はったり屋でもウソつきでもない。ひとつひとつの事柄をていねいにわかりやすく説明できる有能なビジネスマンという印象であった。
お互い聞きたいことはたくさんあった。我々にとって一番重要なのは、不信感を持ったままでは取引はできないということだ。そこで、こう切り出した。 「FFミラーのサンプルを同業他社に渡して、分解して同じものが作れないかと聞いたのではないか」。彼はこれを真っ向から否定し、「それは犯罪になるから、絶対にそんなことはしていない」という。
次は、鏡の基準が明確かどうか、である。かつて航空業界関係者から、「合格基準が厳しくて、3~5割が返却されて、業者は苦しめられている」という話を聞いていた。そんなことが日常的におこなわれてはビジネスにならない。そこで、「ボーイング社は検査が厳しくて、納品しても不良にされるのではないか」と尋ねたのである。 責任者は、「サンプルが米航空局とボーイング社のテストでOKならば、それとすべて同じ条件で作れば同じものができるはず」と主張した。そう言われて見れば、確かにその通りである。素直に納得した。その他、製品の安全性やトレサビリティについてなど、多くのテーマについて話し合った。

信頼してサンプルを渡す
会談は、午後3時から6時まで3時間に及んだ。まさしく真剣勝負の場。そしてそれは実りあるものとなった。この日、ボーイング社の責任者を信頼して、請求されていたサンプル3枚を手渡した。
そして、この責任者が会談の最後に言った「ボーイング社のビジネスにとって、会社や建物の大小などは全く関係ない」という言葉は、大変心強いものとして今も心に残っている。