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デルに学んだ物語<連載No.1>

商品発送用ダンボール在庫を「ゼロ」にした物語

─社内だけのカイゼンから サプライヤーとのカイゼンの時代へ─

江戸前寿司はNPS方式だった!!

10年ほど前に『NPSの奇跡』(篠原 勲著 東洋経済新報社刊、NPSは大野耐一氏主催)という本に出会い衝撃を受けた。このNPSはニュープロダクションシステムの略で、ミサワホーム・タカラ・すかいらーく・横河電機等の一流企業がすでに導入していた。コミーもNPSの多品種・少量・短納期の生産システムにチャレンジを始めた。

その後、一流のカイゼンコンサルタントの指導も受け続け、いろいろなカイゼンを行ってきた。

一般に、コンビニ・スーパー方式の寿司の生産システムは、見込み生産なので売れなければ鮮度が落ち、不良在庫として捨ててしまうことになる。これに対し、客の注文に応じて、その場で作る江戸前寿司は鮮度がよく、廃棄もない。これがNPS方式である。また、NPS方式ではレストランなら一つのテーブルで4人の客から違った食事を注文されても、同時にスピーディーに出せるようにもできる。

コスト的にみても、在庫を持たないから倉庫に貯めておく費用、倉庫への出し入れの費用、最悪事には賞味期限切れによる廃棄の費用も発生しないことになる。

コミーも、少量なら前日の注文は翌日組み立てて出荷できるようになった。また場合によっては当日受注し、その日に組み立てて出荷もできた。もちろん完成品在庫を持たず、適量の部品や材料を在庫し、あくまで注文があってから組み立てて出荷する方式をとっていた。

この生産システムで良いと思っていたが、現場ではいろいろな問題が発生していた。

社内だけのカイゼンだけでは限界・・・

梱包用のダンボール箱は他の部品に比べて安く、サプライヤー(外注・協力会社)も多いので10年以上軽視していた。

しかし、箱の種類はいつのまにか100種類近くにも増え、商品と箱の対応もわかりにくくなっていた。受注すると、1日に何回かは倉庫へ行ってダンボール箱の在庫数を確認するようになってしまった。

夕方になってお客様から「どうしても明日の出荷を・・・」と要請された時など、ダンボール箱の不足に気が付きあわてて発注し、それを社員が車で片道30分かけて、引き取りに行ったこともあった。

このような在庫の確認時間、緊急(発注・引取り・納品)が、ダンボール箱数個のためだけで発生していた。

コンピュータ導入はコミーだけでなく、高有紙業(ダンボール屋さん。以下K社)にも覚えてもらうのも大変。お客様と出荷日(機種と数も含む)を約束した時点で、組み立て日の朝に持ってきてもらえれば、コンピュータも必要ないはず。FAXだけで何とかならないかと思った。

『デルの革命』から新たな衝撃!! SCMを学ぶ

2年ほど前『デルの革命』(日本経済新聞社刊)という本を読み、新たな衝撃を受けた。『NPSの奇跡』から10年以上経っていた。

デルはコンパックを抜き、世界のトップになり、不況といえどもまだ成長している。その秘密は完成品在庫ゼロで、客の仕様に合わせた1個の注文から納期を約束してつくることである。

この方式では、絶対売れる商品しかつくらず、もっとも鮮度のよい最終ユーザー指定の商品を提供できるのである。

そのためには受注時の納期や仕様情報が即サプライヤーにも伝わっていなくてはいけない。

デルはサプライヤーには必要な情報をすべて提供し、彼らはその情報にもとづいた判断をする、即ち「目標をオープンにし共有してゆくこと」と書かれていた。

SCMとは「サプライチェーン・マネジメント」の略であり、顧客・小売・卸・製造業・部品や資材サプライヤーなどを結ぶ供給活動の連鎖構造を管理することである。コミーが先に導入したNPSは、主に自社内だけの生産システムの改革であったが、SCMは「お客様」「サプライヤー」「自社」の情報の流れ方すべてを改革することなのである。

極めてわかりやすいビジネスモデルであり、コミーはSCMの概念をこの本で学ぶことができた。

我々もお客様、サプライヤー、コミー各々に納期の整合性をもたせたら在庫はゼロに近づくはずと考えた。

これからの日本のものづくりはこのようにSCMとNPSを合わせた生産方式か、よほど優れた技術を持っているかの商品でなければ、中国に完敗してしまうと思う。

K社にとっても営業活動するとき「10個以下はつくりません」「納期は3日です」などと言うより「多品種・少量・短納期の発注でも構いません」「A時までの注文なら翌日B時に製造ラインに置いておきます」と言ったら、K社への発注も増えるのではないかと思った。

NPSやSCMも知らないK社の岡田社長が「やりましょう」と言ってくれた

K社には『NPSの奇跡』『デルの革命』や新聞、雑誌の切り抜きなどを見せながら話をしてみた。

発注の考え方は従来「こういうダンボール箱をつくって下さい」だった。しかしこれからは「お客様との出荷約束日にこの機種を組み立てるので、朝、指定場所に置いて下さい」に変えられないだろうかと考えた。

そして「そのために必要なカイゼンを一緒にやりませんか、必要ならお金も人も出しましょう」と話した。

NPSとSCMの概念を導入し、「ダンボールの在庫(非常用以外)をゼロ」にすることが狙いであった。

そしてダンボールで成功すればもっと他の部品にもこの考え方が応用できると考えた。

コミーに導入からNPS10年のノウハウがあるからといって、K社がコミーのNPS方式を取り入れられるかどうかの不安はあった。しかしK社の社長は意外と簡単に引受けてくれた。

こんなことから平成12年の暮れに社長を中心に「ダンボール箱合理化への道」なるプロジェクトを発足させた。

当初は2、3ヵ月でできると思ってスタートしたが、なんとか試行に入れたのが4月、定着できてきたのが7月になってしまった。

No.2につづく