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航空業界参入物語<連載No.1>

「私たち10年来の願いでした」との言葉から始まった

羽田に向かう飛行機の手荷物入れを見て「こんなところにもFFミラーがあったらいいな」と思った。その4カ月後、幸運にも我々は客室の現場を見せてもらうことができた。

●念願の実機搭乗、現場確認が実現
A300機内 1995年11月、家具メーカーから家具の棚の上段で死角になっているところを見たいとの要望があり、札幌を訪問した時のことである。その帰りの飛行機の中で、ふと機内の手荷物入れ(航空業界では「BIN/ビン」と呼んでいる)が目にとまった。既にそこには平面鏡が取り付けられていたが、奥の方まではよく見えない。そしてその平面鏡の表面もキズだらけである。「こんなところにもFFミラーがあったらいいな*」と思った。
早速、航空業界に詳しい友人にFFミラーのサンプルを送り、このようなミラーを航空業界で役に立たせることはできないかどうかとたずねてみた。友人はすぐに調べてくれたが、「もう既についているから必要なし」との答えだったという。我々としては、現場を直接見て、担当の方からの話を聞きたいと思っていたので、なんとか次の機会をさらにお願いしておいた。友人もそのことを気にかけてくれていて、翌年の年賀状には「去年からの課題があったなぁ」と書いてあり、念願の国内エアラインの一社を訪問する機会をつくってくれた。

そして96年3月13日、我々は羽田整備工場でA300(エアバス)の内部を見学させてもらったのである。当時はその友人も忙しい時間をさいて立ち会ってくれた。エアラインの方々にも親切に対応してもらい、ただ現場を見せるだけでなく、実際にFFミラーを持ち込んで、現場で本当に役立つかどうかを試させてもらうこともできた。

●「私たち10年来の願いでした」の言葉に「よし!やるぞ」と発奮
その場に同席した客室乗務員の方々の反応は上々であった。
今までビンの忘れ物は靴を脱いで座席に乗り、手探りで確認していたが、これならば通路を歩きながら両隣りのビンの隅々、奥まで見渡せる。
時間と手間がかなり短縮され、忘れ物を発見した場合に、お客様がゲートを出る前にお渡しすることができるかもしれない。
そしてお客様ご自身でのセルフチェックにも役立つことから、忘れ物に対する不安が解消される。そういった様々なメリットが確認されたのである。
客室乗務員の責任者は、「ビンの確認作業を、確実にそして楽にこなすことは10年来の願いでした」とまで言ってくれた。

●客室乗務員のもうひとつの大事な仕事。後ろにも目?
機内イラスト 客室乗務員の業務で、一般に知られているのは、乗客に飲食物を配ることだろう。しかし聞いてみると、実はもうひとつの大きな仕事があった。それは、事故防止のため、いつも乗客の動きを観察しておくこと*だという。
その事故にも様々あり、離着陸のシートベルトの着用時に、それを無視してトイレに立った乗客が、気流の関係で足元をすくわれ怪我をするかもしれない…という個人レベルのものから、ハイジャックや機体のトラブルなどの大きなものまでが想定される。
それらの非常時に速やかに対応し、乗客の安全を確保するために、常に乗客を見ておく必要があるのである。航空法*でも、客室乗務員はいつも客室内の一定範囲(70~80%)を視野に入れておかなくてはならないと規定されているそうだ。それは、客室乗務員自身がシートベルトを着用し、乗客と背中合わせの場合でも同様だという。

※航空法… 航空に関する行政上の取り締まりのために、国際民間航空条約に基づいて制定された法律。昭和27年公布。

●FFミラーを最大限に活かせる市場ではないか?
客室乗務員の話を聞いて、我々はこう考えた。
FFミラーなら小さなサイズで一瞬ですべてが見える。しかもはるかに軽量ですむ。場所柄、手荷物その他が鏡にぶつかりやすいところだが、ハードコート加工で表面にキズがつきにくい。航空業界というのは、「出っ張らない」「超軽量」というコミーのFFミラーの特徴を最大限活かせる市場ではないか。飛行機は巨大なマーケットになるかもしれない。飛行機用ミラー開発にチャレンジしてみる価値があるのではないか。10年間、FFミラーを開発してきた成果を活かせるかもしれない。そして貨物機など他の飛行機やさらには船舶などでも利用できるかもしれない……。

●「エア記念日」の誕生
ここでの話の最大の収穫は、現場を知る人達の生の声であった。
ビンの確認作業を、“確実”に“楽”にこなせることが、「10年来の願い」というほど切実なものであったこと。また、我々が考えていたFFミラーの用途は、ビンの中の忘れ物チェックだったが、客室マネージャーから、「シートベルト着用時の客室確認という使い方もある」と指摘されたこと。こうした言葉やアドバイスは貴重である。それらによって、製品の利点や思わぬ使い方などを知ることもできるし、もし難点があれば、それを解消、改良していくことができるからだ。

我々は、この1996年3月13日を「エア記念日」と名付けた。「航空業界というまったく新しいニーズを発掘したこと」および「現場で実際に使っている人達、困っている人達の話を聞くことがいかに大切か」という教訓を得たことを記念し、肝に銘ずるためである。