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車椅子から見たニッポン<連載No.1>

マサとの出会い<小宮山記>

マサとの出会いは約2年前、多摩大学 北矢行男教授が主催するソシオ・ビジネス研究会であった。

その時の講師であったマサの話は
「高校時代に車椅子生活となり、日本で大学を卒業した後、単独で渡米し、3年間のアメリカでの生活体験、そして帰国後の生活」
であった。わかりやすく面白い話であった。
講演の後、マサに「今の話、面白かった。本に書けないだろうか?」と話をした。
その後、しばらくの期間、マサは研究会を欠席していたが、久しぶりに研究会に出席し始めた。
何度か会話を交わしていくうちに、以前聞いたマサの話の内容はすっかり忘れてしまっていたことに気づいた。
思い切って「うちの会社へ遊びに来ないか?」と聞いてみたところ、二つ返事で「是非!」という返事をもらった。

最近ではバリアフリー対策として各駅にエレベータやエスカレータがつくようになった。
おかげで当社の車椅子用ミラーも製造、販売できるようになった。
しかし、このミラーを使った最終ユーザーからの意見は全く聞いたことがなかった。
商品は「売ってくれる人」「決めて、お金を出してくれる人」がいて、最後に「現場で使ってくれる人」と流れるのだが、メーカーは最終ユーザーの意見が一番大事だということを痛感している。
看板業をしていたころ、ある人が凸面鏡をただ置いていった。その凸面鏡と、以前、貰った回るモーターとを組み合わせて回転する鏡を作ってみた。
面白いディスプレイだと感じ展示会に出してみたところ、大量に購入する人がいた。
その後、お店を訪ねてみたら「万引防止に効果あり」という話で、当社は防犯ミラーのメーカーになったといういきさつがある。

マサに会社へ来てもらおう。日時を約束し、西川口駅近くにある事務所まで来てもらうことにした。
少し話をして、ビールでも飲みながら食事でもと考えてみた。

さて西川口で電車を降りたらどのように来るか?
ホームから登る階段に車椅子で利用できるエスカレータがついている。
それを利用し、改札口を出たら、最近できたエレベータがある。
そこには、当社のミラーもついている。どのように彼は使うのだろうか?
駅から会社まで 3~4分。そして事務所は2階。車椅子で階段を上り下りするには、4人いれば可能である。

そして次の問題はトイレだ。車椅子生活にとってトイレの場所は特に重要。
インターネットで車椅子利用者が食事とトイレができるところを探す。
なんと当社から青木公園(徒歩15分くらい)まで行かなくてはならない。
マサに確認すると電車でなくて車で来るという。車にどう乗り降りするのだろう。
そういえば、マサはアメリカで車で一人旅をしていたという。
結局、コミーの近くへきたらマサが携帯で電話し、我々が外へ出て4人で2階まで車椅子を持ち上げ、2時間ほど話を聞き、川口駅前のリリア(多目的市民ホール)まで車で移動し食事をした。
ここには車椅子利用者でも使用可能なトイレ、レストラン、駐車場があった。
マサだけは車なのでビールを飲まず我慢してもらうことにした。
この日、数時間だけで、我々は車椅子生活の驚くべき知識を得ることができた。

No.2へつづく

略歴

鈴木 雅彦(通称/マサ):

高校2年次に、手術中の医療ミスにより、下半身不髄(L1)となる。1992年、1年半の入院を経て在学中であった高校へ復学し、1年後に卒業。その後、多摩大学経営情報学部に入学。卒業後、渡米し、「老年学」(Gerontology)のプログラムを大学にて専攻。米国各地にて関連セミナーなどに参加。2001年帰国後、多摩大学ソシオ・ビジネス研究会に所属。