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「万引問題」物語<連載No.5>

万引問題は、捕まえた人に聞け!!

万引防止のプロ。保安員の驚くべき能力!

我々の思いがやっと実現し、安藤さんがコミーに来てくれた。 「あらゆる人が万引します。例外はありません」安藤さんは、静かに語り始めた。

安藤利子さん
C社、統制指令長の安藤利子さん

1998年9月9日、超多忙な中、C社の安藤さんが、保安部長の森さん(注)と一緒にコミーを訪ねてくれた。安藤さんについては「怪しい人がいれば鳥肌が立ち、万引犯を一発で見分けることができる超ベテラン」と聞いていたが、そのイメージとはまったく違った印象であった。 小柄でもの静かな方で、世間話は一切せず、我々のいろいろな質問にひとつずつ丁寧に答えてくれた。 安藤さんは、「まさかこんな人は万引しないだろうとか、あんな立派な人が万引なんか・・・といった先入観は、万引防止の現場ではまったく通用しません。 今は、お客さんだけではなく店員さんも、若い人だけではなくお年寄りも、そしてよく知った常連さんまで、あらゆる人が万引します」と話してくれた。 外見ではわからない、あらゆる人が万引する可能性があり、例外はないというのである。 続けて「私たちは確かに万引犯を捕まえますが、それはあくまで万引防止という目的のための手段に過ぎません」という。つまり、万引犯を捕まえるのは、二度と繰り返させないようにするためなのである。

並の能力ではつとまらないプロ保安員の世界

「不審者の発見能力」「記憶力」「集中力」「観察力」「説得力」……。「万引犯をどうやって捕まえるのか」という問いに、安藤さんは順序だてて答えてくれた。その内容を簡単にまとめ紹介する。

1:不審者の発見

大勢の客の中から怪しい人を見つけることができなければ、それだけで保安員失格。仕事が始まらない。 安藤さんは、勘と洞察力で一瞬にしてわかるという。まさに「鳥肌が立つ」とのこと。森部長などは「何度、同じ現場にいても、さっぱりわからない」という。この仕事は、経験や教育もさることながら、かなりの資質も求められるようだ。

2:着手

次に不審者の動きを追って、相手に気付かれないように尾行する。 そして商品を手に取る瞬間を自分の目でしっかりと見届ける。「着手」と呼ぶ。この時点では万引するかどうかはわからない。保安員は、不審者がどの場所で、何を手に取ったか、その後どうしたかをしっかりと記憶していなければならない。それが、何点もの商品に及ぶという。しかもその時の犯人のしぐさまで再現する事ができるというから驚きだ。 その記憶した内容で、他の店で買ったなどとの言い逃れに反論するのだ。

3:現認

着手の後も観察を続け、不審者が商品をカバンやポケットに入れるところを確認する。「現認」という。 現場確認という意味合いだろうか。まさに万引の瞬間である。しかしこの段階でも保安員は観察を続ける。 レジでちゃんと勘定を済ませる可能性もあるし、捉えた後に「ちゃんとレジに行くつもりだった」と反論されることもあるからだ。その後その人がどこへ行くのか、レジを通るのかどうかを確認するための尾行を続ける。

4:未精算確認

次に、不審者が隠した商品の代金を支払わなかったことを確認する。 万引犯は、万引商品を隠してレジに行き、他の商品の支払いをすることもあるからやっかいだ。 店を出るまでは、精算の意思があるかないかを100%明確にすることはできないのだ。 万引犯の中には、店外に出ても「外の車に忘れた財布を取りに行くつもりだった」と強弁する者もいるという。

5:声掛け・万引犯確捕

万引犯が店から道路に出たところで保安員が前に回って、声を掛ける。 「お客様、精算が済んでない品をお持ちではありませんか」。 保安員が「確捕」と呼ぶ犯人捕捉の瞬間である。前に回るのも、逃げようとする犯人を制するためである。 決して「お客さん、万引しましたね」とは言わない。 彼らは、いろいろな言い訳をするし、万が一、名誉毀損などと言われては大変だ。 盗んだものを確認し、本人に犯行を認めてもらうまでは、一応はお客さんという建前である。 デパートなどでは、応接室みたいな個室で対応するともいう。 確捕の後、事務室や保安室などに連れていく途中も油断できない。保安員の一瞬のスキをついて商品を捨てたり、通りすがりの棚に置いたりして犯行をごまかすことがあるからだ。

6:処置

確捕の後に万引犯に犯行を認めさせ、場合に応じては学校に連絡したり、親を呼んだり、警察に引き渡すなどの処置をおこなう。これらのどの過程においても、一瞬でも目を離したり、観察の空白があってはならない。 並の集中力ではない。相手に気付かれず一部始終を見届け、さらにそれを記憶しておく必要があるのだ。 万引犯の様々な言い逃れに対しての反証、警察に対しての状況説明のためである。 相手に気付かれないための「演技力」も必要だ。 保安員は、ある時はふだん着の主婦のように、ある時はお金持ちの奥様風にと、客層に応じた服装としぐさで売場に溶け込むのだ。 不審者の発見から確捕まで、平均すると一時間くらい。緊張に満ちた尾行が数時間続くこともまれではないという。 警察に引き渡し、一件落着するまでさらに数時間かかるという。 我々はこうした話を聞いて、大変なノウハウを教えてもらったような気がした。 しかし安藤さんは、「どうということのない当たり前の話」だという。話してくれた内容は、あくまで初心者用の基本であって、万引のプロなどに対しては、もっと奥の深いノウハウを駆使して対決しているのだろう。

犯行を100%確実に証明できなければ店の信用問題に!

「私たち保安員が一番恐れるのは、誤認です」と安藤さんは言う。 保安員にとっての「誤認」とは、万引を立証できないことである。 犯行を100%確実に証明できなければ店の信用問題になってしまうのである。 そのため、一瞬でも見落としがあったり、自信が揺らぐときは尾行をやめるという。 安藤さんは、「一番悔しいことは?」との質問に、「犯人を捕り逃がした時です」と答えた。 これは逃げられたというよりも、間違いないと思いつつも、あきらめざるを得なかったことを言っているのだろう。 しかし、犯人を捕り逃がしても、成功に味をしめた犯人は必ずまた来店する。その時にはさらに慎重に尾行し、必ず捕まえるという。午前中に見逃した犯人をその日の午後に捕まえることもあるという。 我々からすれば、何も同じ日に来て捕まらなくてもと思うが、万引犯からすれば、まんまと成功した店でもうひと稼ぎという気持ちになるのかもしれない。 安藤さんは「どんな大物のプロでも必ず捕まえられる」と言い切る。言い訳のきかない厳しい現場の中にあって、この自信と確信を大勢の部下に教え、伝えているのだろう。

「ここにミラーがあったらなあ!」保安員の悔しい思い

保安員は、尾行の途中で「ああ、ここにミラーがあったらなあ!」という悔しい思いを何度も味わうという。 尾行は、相手に意識されないよう、不審者の顔はほとんど見ず、顎を下げておこなう。 その保安員にとって、相手の手元が見えるミラーがあればどんなに助かるだろう。 保安員は、店内の防犯ミラーはもちろんのこと、普通の鏡や手持ちの手鏡、コンパクトなどあらゆる鏡を使って、万引犯を追うのだ。場合によっては、什器やガラス面に映りこむ犯人の動きなども利用するという。 それだけに、ミラーの特性も熟知している。安藤さんの話は、プロ中のプロの話だけに奥が深く、ミラーの特性についても「ミラーに映った像が大きくなる時は……。小さくなる時は……」などと、はじめは禅問答みたいに難しかったが、話を聞いている内に、だんだん理解できるようになった。そして、その内容がわかるにつれ、メーカーである我々も意識していなかったミラーの特性を熟知し、活用していることに驚かされた。

真のユーザーに出会えた喜び 「ここまでミラーを使いこなしてくれていた!」

前回紹介した大手書店でのミラー導入希望も、こうした保安員の切実な願いからだったのだ。 ここまでミラーのことを深く知り、使いこなしてくれていたのか! そして、我々の「ミラーは万引防止に本当に役立っているのか?」という問いに対する明確な答えも得ることができた。 日々、万引防止に全力であたっている保安員にとって、防犯ミラーは必需品だったのである。 すぐれた保安員ほど、ミラーを自分の道具として使いこなしている 。 我々はメーカーとして、真のユーザーに出会えた喜びを感じた。

「ミラーを役立っていますか?」と聞いた相手は…

ミラーの真のユーザーの発見は容易なことではありませんでした。 店員なら誰にでも「このミラー役立っていますか?」と聞いたところ、「見てないよ」とか、 明確に答えてくれずにガッカリしたこともありました。 お店の経営者がアルバイト店員の万引(内引き)にも神経を使っていると聞いたのはその後のことです。 店員の中でもミラーのユーザーはわずかかもしれません。ミラーの設置目的が万引防止にあるならば、万引犯を捕まえる人が真のユーザーでした。 [注]安藤さん、森さんは、その後C社を退社され、現在、国際警備(株)に勤務されています。

No.6へ続く

お試し無料貸出し制度

最適なミラーを選ぶには(1)映る範囲、(2)像の大きさ、(3)使用環境の3つの条件が決め手になります。 現場で確認したいこともあると思います。詳細はご連絡ください。(個人のお客様は除きます)